隣接三項間漸化式の解き方|思考力を鍛える数学

つぎの形の隣接三項間漸化式を考えましょう. $$a_{n+2}+pa_{n+1}+qa_n=0 (n=1,2,3,…)  \cdots (*)$$ ここで,$p,q$ は定数で,$0$ でない数とします.数列 $\{a_n\}$ に対して,$a_1,a_2$ の値と,上の漸化式を与えれば,すべての項がただ一通りに定まります.では,数列 $\{a_n\}$の一般項はどのようにすれば求めることができるでしょうか.

いま,仮にある定数 $\alpha,\beta$ を用いて,上の漸化式 $(*)$ を $$a_{n+2}-\alpha a_{n+1}=\beta(a_{n+1}-\alpha a_{n})  \cdots (**)$$ のように変形できたとします.すると,この漸化式を繰り返し用いると, $$a_{n+1}-\alpha a_{n}=\beta(a_{n}-\alpha a_{n-1})=\cdots =\beta^{n-1}(a_{2}-\alpha a_{1})$$ すなわち, $$a_{n+1}-\alpha a_{n}=\beta^{n-1}(a_{2}-\alpha a_{1})$$ を得ます.これは,隣接二項間漸化式なので,そこで学んだ方法で解くことができます.(詳しい解き方の例は次節を参照してください)

さて,では,上式 $(**)$ の $\alpha,\beta$ はどのようにして求めることができるでしょうか.ここで,$(**)$ を変形すると, $$a_{n+2}-(\alpha+\beta)a_{n+1}+\alpha\beta a_{n}=0$$ となります.これと $(*)$ 式の係数を比較すると, $$\alpha+\beta=-p,\alpha\beta=q$$ が導かれます.つまり,$\alpha,\beta$ は,$2$ 次方程式 $$t^2+pt+q=0$$ の解です.したがって,漸化式 $(*)$ に対して,この $2$ 次方程式を解き,その解を用いることで,隣接二項間漸化式を解く問題に帰着することができるのです.

漸化式 $a_{n+2}+pa_{n+1}+qa_n=0$ に対して,$2$ 次方程式 $t^2+pt+q=0$ のことを特性方程式といいます.

隣接三項間漸化式の解き方: 数列 $\{a_n\}$ は,$a_1,a_2$ と漸化式 $a_{n+2}+pa_{n+1}+qa_n=0 (n=1,2,…)$ で定められるとする. $step1.$ 特性方程式 $t^2+pt+q=0$ の解 $\alpha,\beta$ を求める. $step2.$ 漸化式を $a_{n+2}-\alpha a_{n+1}=\beta(a_{n+1}-\alpha a_{n})$ の形に変形する. $step3.$ この漸化式を繰り返し用いて,$a_{n+1}-\alpha a_{n}=\beta^{n-1}(a_{2}-\alpha a_{1})$ を得る.

$step4.$ この隣接二項間漸化式を解く.

具体的な例を通して,解き方を見てみましょう.細かい部分で解き方に多少の違いがでますので,自分のやりやすい方法をひとつ見つけるのが良いと思います.

特性方程式が重解をもつとき

この場合は,比較的簡単です.

 $a_1=1,\ a_2=2,\ a_{n+2}+6a_{n+1}+9a_{n}=0\ \ (n \ge 1)$ によって定められる数列 $\{a_n\}$ の一般項を求めよ.

特性方程式 $t^2+6t+9=0$ を解くと,$t=-3$.したがって,漸化式は, $$a_{n+2}+3a_{n+1}=-3(a_{n+1}+3a_{n})$$ と変形できる.これを繰り返し用いると, $$a_{n+1}+3a_n=-3(a_{n}+3a_{n-1})=\cdots =(-3)^{n-1}(a_2+3a_1)=5\cdot (-3)^{n-1}$$ これは,$a_{n+1}=pa_{n}+q$ に帰着できる漸化式の例 で紹介した方法で解くことができます.

具体的には, 最左辺と最右辺を $(-3)^{n+1}$ で割って, $$\frac{a_{n+1}}{(-3)^{n+1}}-\frac{a_n}{(-3)^n}=\frac{5}{9}$$ ここで,$b_n=\frac{a_n}{(-3)^n}$ とおくと,数列 $\{b_n\}$ は初項 $b_1=\frac{a_1}{-3}=-\frac{1}{3}$,公差 $\frac{5}{9}$ の等差数列です.したがって, $$b_n=-\frac{1}{3}+(n-1)\frac{5}{9}=\frac{5n-8}{9}$$ となり,これに $b_n=\frac{a_n}{(-3)^n}$ を代入すれば, $$a_n=(-3)^n\left(\frac{5n-8}{9}\right)$$ と求めることができます.

このように,特性方程式が重解をもつときは,等差数列を解くことに帰着できます.

特性方程式が重解をもたないとき

解き方が複数考えられるので,ここでは $2$ 通りの方法を紹介します.

 $a_1=0,\ a_2=1,\ a_{n+2}-5a_{n+1}+6a_{n}=0\ \ (n \ge 1)$ によって定められる数列 $\{a_n\}$ の一般項を求めよ.

考え方1

特性方程式 $t^2-5t+6=0$ を解くと,$t=2,3$.したがって,漸化式は, $$a_{n+2}-2a_{n+1}=3(a_{n+1}-2a_{n})$$ と変形できる.これを繰り返し用いると, $$a_{n+1}-2a_n=3(a_{n}-2a_{n-1})=\cdots =3^{n-1}(a_2-2a_1)=3^{n-1}$$ これは,$a_{n+1}=pa_{n}+q$ に帰着できる漸化式の例 で紹介した方法で解くことができます.

具体的には,最左辺と最右辺を $3^{n+1}$ で割って, $$\frac{a_{n+1}}{3^{n+1}}-\frac{2}{3}\frac{a_n}{3^n}=\frac{1}{9}$$ ここで,$b_n=\frac{a_n}{3^n}$ とおくと, $$b_{n+1}-\frac{2}{3}b_n=\frac{1}{9},\ \ b_1=0$$ 変形して, $$b_{n+1}-\frac{1}{3}=\frac{2}{3}\left(b_n-\frac{1}{3}\right)$$ これを繰り返し用いると, $$b_n-\frac{1}{3}=\frac{2}{3}\left(b_{n-1}-\frac{1}{3}\right)=\cdots=\left(\frac{2}{3}\right)^{n-1}\left(b_1-\frac{1}{3}\right)=-\frac{1}{3}\left(\frac{2}{3}\right)^{n-1}$$ つまり, $$b_n=\frac{1}{3}-\frac{1}{3}\left(\frac{2}{3}\right)^{n-1}$$ これに,$b_n=\frac{a_n}{3^n}$ 代入すると, $$a_n=3^n\left(\frac{1}{3}-\frac{1}{3}\left(\frac{2}{3}\right)^{n-1}\right)=3^{n-1}-2^{n-1}$$ と求めることができます.

考え方2

特性方程式 $t^2-5t+6=0$ を解くと,$t=2,3$.したがって,漸化式をつぎのように $2$ 通りに変形することができる. $$a_{n+2}-2a_{n+1}=3(a_{n+1}-2a_{n})  \cdots ①$$ $$a_{n+2}-3a_{n+1}=2(a_{n+1}-3a_{n})  \cdots ②$$ ①を繰り返し用いると, $$a_{n+1}-2a_{n}=3(a_n-2a_{n-1})=\cdots =3^{n-1}(a_2-2a_1)=3^{n-1}  \cdots ③$$ また,②を繰り返し用いると, $$a_{n+1}-3a_{n}=2(a_n-3a_{n-1})=\cdots =2^{n-1}(a_2-3a_1)=2^{n-1}  \cdots ④$$ ③ー④より, $$a_n=3^{n-1}-2^{n-1}$$ と求めることができます.

 $a_1=1,a_2=2,a_{n+2}-2a_{n+1}+a_{n}=0 (n=1,2,…)$ によって定められる数列 $\{a_n\}$ の一般項を求めよ.

 $a_1=1,a_2=2,a_{n+2}-4a_{n+1}-5a_{n}=0 (n=1,2,…)$ によって定められる数列 $\{a_n\}$ の一般項を求めよ.

$$a_n=\frac{5^n-(-1)^n}{6}$$

 $a_1=1,a_2=1,a_{n+2}=a_{n+1}+a_{n} (n=1,2,…)$ によって定められる数列 $\{a_n\}$ の一般項を求めよ.

$$a_n=\frac{1}{\sqrt{5}}\left(\left(\frac{1+\sqrt{5}}{2}\right)^n-\left(\frac{1-\sqrt{5}}{2}\right)^n\right)$$

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